働く女性のホンネVol.14
~感情コントロールのスキルを付ける~

働く女性のホンネVol.14<br>~感情コントロールのスキルを付ける~

皆さまこんにちは、「MRWomen’sLife」編集者の吉岡です。

ちょうど先月、PTAの研修会に参加する機会があったのですが、衝撃を受けたお話がありました。それは、子どもの前での夫婦喧嘩は、家庭内暴力に値する、というものでした。
子どもに直接手を上げたり怒鳴ったりしていなくとも、夫婦間の暴言のやり取りを見聞きすることによって脳に大きなダメージを受け、成長への悪影響、ストレスによる体調不良や不登校、人間関係や社会への不信を招いてしまうというのです。確かに、子どもへの影響は重視すべきで、最大限配慮しなければならないと思うものの、正直、自分自身の感情コントロールにそれほど自信もないため、私にとってはなかなか高いハードルだなぁ、と意気消沈してしまいました。

そんなお話を聞いた一方、ふと観ていたテレビで、あるアーティストの方が「皆さん日々の生活の中で感情表現していますか?コンプライアンスに引っ張られて感情を表現することを忘れていませんか??」と視聴者に問いかけていたのです。喜んだり楽しんだりというポジティブな感情だけでなく、人間だからこそ時には怒りや悲しみといったネガティブな感情も吐き出した方が良いというお話をされていました。
私にとってはPTA研修での話とのギャップも相まって、非常に衝撃的かつ心に刺さった問いかけでした。

デジタル時代における感情表現とコンプライアンス

確かに、世の中を見渡してみても、コンプライアンスの厳格化が問われています。政治・経済におけるコンプライアンス違反のニュースが連日のように報道され、メディアの報道も相まってか一気に社会の注目を集めることも増えてきました。

そんな世相と並行するように、私たちの日常生活においても個人の発言や行動に責任を求められる場面が増え、コンプライアンスに対する考え方が非常に厳しくなっていると感じます。
テクノロジーの進歩によりSNSというツールで世界中とつながりが持てるようになった今、投稿の内容によっては、世界中から注目される可能性を誰もが持つ時代となりました。そこでは、投稿した本人にとってみれば悪気のない一言でも、受け取る相手によってはネガティブな感情をもたらすこともあり、デジタル社会の中での発言にも個人に責任が生じます。

誰かの投稿を見て異論を唱える際も、感情的になって相手を罵るような否定の仕方をすれば、誹謗中傷となりますし、ネット上で悪質な誹謗中傷を行えば法的措置も講じられてしまいます。日常における友人とのオフラインでの会話と同様に捉えてしまうと非常に危険です。自己の感情のままに投稿することはもはやNGとされ、書き込みを見た様々な方のバックグラウンドや、受け取り方の多様性を想像したうえで投稿することが求められています。

感情の抑圧とメンタルヘルス

このように社会生活の変化、デジタル技術の進歩によって個人の責任が大きくなっている今、感情のコントロールに苦労されている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。言いたいことがあるけれど言葉にしてもいいのだろうかと悩み言葉にできない、感情を表に出さないように必死にこらえている、そのような心理状態が続いてしまうとメンタルヘルスの不調にもつながってしまうと思います。

まさに今、世界中で心の病が増加し喫緊の課題となっていますが、NTTデータ経営研究所の調査によると、長く企業に勤め、テレワークを定期的に行える環境下にある40~50代のストレスや悩みが、コロナ禍以降増加しているそうです。

参考:NTTデータ経営研究所「働く人のメンタルヘルスとサービス・ギャップの実態調査」

「周囲を頼りづらい、相談しづらい」といった想いから相談を避け、仕事や家庭の悩みを自分自身で解決しようとしてしまう傾向にあるのかもしれません。

このようなデータを見ると、まずは感情を素直に受け入れること、ストレスがあるという認識を持つことが非常に重要だと感じます。周囲に心を許せる人がいるのであれば感情のままに話してみたり、趣味や没頭できるものなど自分なりのストレス発散方法を見つけたり、企業のメンタルヘルス相談窓口や外部の相談機関を上手に活用したり。自分を抑えこむのではなくきちんと労わる+周囲を頼り解決の糸口を見つけて行くことが大切だと思います。

高度な感情コントロールが当たり前の時代に?

コンプライアンスの厳格化は、社会の安定を保つためには不可欠です。戦前・戦直後は自分自身が生きていくことで精一杯であり、コンプライアンスという言葉とはかけ離れた社会状況だったと聞きます。また、私が社会人になったばかりの頃は、当時の上司は上手くいかないことがあると無関係の社員にも罵声を浴びせていた場面を何度も目にしましたし、お隣の会社では罵声と共に家具が倒れる音がしていました・・・。いまでは、これは一般的にパワハラとみなされますね。こんな風に二十余年前ですら、今よりも感情を表に出しやすい世の中だったと思います。
そこから時代は変わり、コンプライアンスが重視され、感情のままに相手と対峙することはNGとされる世の中になりました。

“コンプライアンスを遵守する”=“多様な社会で様々なバックグラウンドを持つ相手がどう受け取るのかを想像する”ことだと私は考えます。現代社会の中でコンプライアンスを意識しながら、ストレスを溜め込まずに感情と上手く向き合い生きていくためには、まず自分ファーストではなく、相手ファーストで考えられる思考を持つこと。そして、自分自身の感情コントロールスキル、ストレスの回避スキルがより一層求められていくのではないかと思います。
時には時と場所に配慮しつつ、上述したアーティストの方が仰った“感情を表に出してストレスを発散させる方法”も良いかもしれません。
歴史を振り返って過去から現代を見ると、今が驚くほどに変化しているように、これからの未来を考えると、人はより相手の気持ちに寄り添うことができる心を持ち合わせ、より高いレベルで感情のコントロールスキルを持つ、そんな世界が当たり前になる未来もそう遠くない気がしています。
現代に生きる者として、私自身も、まずは相手を尊重し、コンプライアンスを意識した上での感情表現方法を身に付け、変化していく必要があると感じています。

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