「こんな風に働きたい、キャリアを積みたい」「こんな生き方をしたい」…自分が希望する将来像や理想の姿に少しでも近づき、充実した人生を送りたいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回ご紹介するMさんは、仕事や生活の優先順位をつけながら自分自身の意思で環境や行動を変えることで、自分らしい人生を歩んでいます。今回はMさんの20代、30代での気持ちの変化や一つひとつの行動の原点となっている想いなどをお話ししていただきました。
目の前のことで精一杯だった20代
新卒で入社したのは、百貨店でした。販売として3年間勤務する中でリーダーも経験し、社会人として着実にステップアップすることができたと思います。その頃に結婚もして、次のステップへ進む良いタイミングだと感じたことから、興味があったMRへのチャレンジを決めました。毎日忙しく動き回り目の前のことに慣れるので精一杯だったので、結婚したものの家庭優先というよりは仕事を第一に考え時間を割くような生活を送でした。
家庭に入るという選択肢もあった中で仕事を優先することを選んだ一番の理由は、仕事を通して自己成長することで社会における自分の価値を高めたいという想いがあったからです。
また、私と夫の二馬力で働き経済的なゆとりを持つことによって、様々なリスクを回避したいという気持ちもありました。その背景にあったのが、学生時代に学んだ心理学です。
授業の中で、仕事などのストレスがきっかけとなり、精神面で不調を抱えてしまった事例に触れる機会が多くありました。ストレス社会と言われている現代において、誰もが心の病気になる可能性があるからこそ、2人で働くことが収入面の安定だけでなくお互いの心の安定にもなるのではないかと考えたのです。家族で豊かな人生を送るためのリスクマネジメントとして、選んだ道でした。
ありたい姿を模索するようになった30代
二馬力で働いたことにより生活に余裕が出てきた30代、MRとしての仕事ぶりを評価していただき管理職へのキャリアアップも見えてきました。そこで自分自身に問いかけたのが「本当に管理職になりたいのか」ということです。周囲の管理職に目を向けてみると、休日など自分の時間を割いてまで熱心に仕事に取り組む方が多かったのです。もし私が管理職になったら、この先も仕事優先で取り組んでいくことができるのだろうか…そう考えた時、仕事に没頭しすぎて精神的に辛い状態になった過去の経験を思い出しました。仕事を一生懸命に取り組む人生も良いかもしれないけれど、その働き方は私に合っているのだろうか?私らしいキャリア形成、私らしい人生とは何なのだろうか?様々な想いを巡らせていたちょうどその頃、夫が仕事の都合でオーストラリアへ赴任することが決まったのです。
当初は、MRの仕事にはやりがいを感じており成果にも繋がっていたので、日本に残ってMRを続けるつもりでした。しかし、一方で管理職を目指すことに自問自答を続けていたため、ある時から海外での新しいチャレンジという選択肢を真剣に考えだしました。一度しかない人生“後悔はしたくない”という想いから、このままMRとして管理職を目指すか、夫と共に海外で新しい生活にチャレンジをするか、毎日とことん考えました。そして、考えに考え抜いた末に最終的に私が選んだ道は、海外での生活でした。
自分の気持ちを大切にすることを学んだ海外生活
オーストラリアで過ごした1年半は、多くの刺激に溢れていました。特に影響を受けたのが、考え方のベースに“相対評価”ではなく“絶対評価”があるという点です。言い換えると “私・あなたがどう考えるのか”が主軸にある考え方でした。例えば仕事の場面であれば、会社や上司の指示を「言われたからやる」のではなく、「なぜ私はこれをやるのか」と自分軸でとらえ、やる意味と自分の意思を結び付けて納得感を持って取り組むということです。
私自身、以前からなんとなくやっていたことではあったのですが、より一層その意識は高まっていきました。また、自分自身の意思決定によって仕事を進めていくからこそ、責任を持って遂行していかなければという気持ちがますます強くなりましたし、タスクが溢れてしまった時には濃淡をつけて取り組むことが出来るようになりました。
海外での生活を選択したことによって、これまでの仕事観や価値観が大きく変わる貴重な経験を積むことができました。
新しい価値を見出したことで仕事も変化
日本に戻ってきてからは、再びMRに復帰しました。自分が会社から求められている役割を把握し、責任を持って働くことは、以前とまったく変わらない私のスタンスです。ただ、自分の価値を見つけるための仕事だからこそ、自分なりにやる意味や意思を持つこと、気持ちを押し殺して我慢をしないこと、素直になること、伝えたいことはしっかりと伝えることを大切にするようになりました。
周囲の仲間に対しても、あくまで私自身の考えとして素直な想いを伝える機会が増えたように思います。実際に仲間の視野を広げるきっかけになったり、働きやすい環境づくりの助けになったりしたこともあったようです。「Mさんのあの言葉に救われました」と思いがけず感謝の言葉を伝えてもらうこともありました。日々の行動・言動の変化が周囲にも良い影響を与えることができたのは、仕事における一つの価値になったのではないかと思います。
現在も、本当にやりたいことを実現できる働き方と生活のベストなバランスをまだまだ探っている段階です。ライフステージに合わせて優先順位を決め、自分の気持ちに素直になり、「充実した人生だな」そう思える状態を、これからも私自身の手で創っていきたいと思います。