2021年6月に「育児・介護休業法」が改正、2022月10月より産後パパ育休(出生時育児休業)が施行されました。政府は、2025年までに男性の育児休業取得率を30%までに引き上げることを目標としています。
男性の子育て参加に向けて国の動きが活発となっている現代において、今後ますます夫婦で協力して育児を行っていくことが求められる世の中になっていきます。
では、実際に子育て真っ最中のご家庭において、男性は家事や育児をどのようにとらえ、どのような想いで取り組んでいるのでしょうか?
今回、ご夫婦共働きで3人の幼いお子さんを育てている男性にインタビューを実施しました。パパ視点での育児の考え方や参加方法、夫婦円満の秘訣などの本音を語っていただいた貴重なインタビューを、ぜひご覧ください。
お話をうかがったのは…製薬業界で働いている元MRのAさん(男性)
同じ業界で働いている奥様と2015年に結婚。2019年に第一子となるご長男が誕生、2022年に第二子・第三子となる双子が誕生。
現在、奥様は二度目の育児休暇中ですが、共働き家庭のためご夫婦で協力して育児を行っています。
目次
コロナ禍で自宅にいる時間が増え、育児参加への想いに変化が。
ー2019年に第一子となるお子さんが誕生されたとのことで、当時はどのように家事・育児に関わっていらっしゃいましたか?
お恥ずかしい話ですが、ほとんど関わることができていませんでした。私はマネージャーとして全国各地を飛び回る生活をしており、平日に帰宅するのは子供が寝静まった後でしたし、土日も研修対応などで仕事になることが多かったのです。
夜中に子どもが泣いたら、おむつを替えたり、母乳をあげるための妻を起こしたりしていたのと、仕事のない休日にはご飯や掃除、洗濯といったサポートをなるべくするようにはしていました。しかし、それだけでは妻の負担が減ることはありませんし、あまり育児に参加できない私への不満も相当溜まっていたはずです。
また私も、仕事があるので仕方ないと思っていましたから、お互いがストレスを感じていた状態だったのかなと思います。
ー奥様が育児休暇から復帰されたことで、これまでの生活も変わられたと思います。Aさんご自身は、育児への関わり方に何か変化はあったのでしょうか?
妻の職場復帰のタイミングが、ちょうどコロナによる自粛時期と重なったため、妻は在宅での時短勤務、私もフルリモート勤務になり、出張や土日の研修もなくなりました。家にいる時間が長くなったことで、保育園への送迎と食事、洗濯は妻、片付けやお風呂掃除は私…と、自然に家事・育児を分担するようになっていきましたね。
また、休日は家族で出かける機会も増えました。妻が一人になれる時間やゆっくり美容室へ行く時間なども作れるように、子どもと2人で出かける時間も取るようにしました。
実は、その頃からやっと子どもにお父さんと認識されるようになりました。やはり、短時間の接点では子どもとの関係性も築きにくいのですね。言葉を覚えてコミュニケーションを取れるようになり、できることも増えてくる時期に、一緒に過ごす時間が確保でき、成長を見られたことは本当に楽しかったです。
幼い子どもが3人に。夫婦で役割分担し、協力していくことの大切さ。
ーコロナ禍が育児参加の契機になったのですね。3年後、さらにご家族が2人増えることとなります。率直に、双子が産まれるとわかった時のお気持ちはどうでしたか?
正直にお伝えすると、楽しみな気持ちよりも不安の方が大きかったです。「一人目はほとんど育児に参加できなかったし、新生児の対応もわからない。そんな俺にできるのか?」というのが本音でした。
ただ、自分にできることは全力でやりたいと思っていました。特に、甘えたい盛りの長男が寂しがる状況にだけはしたくないと思っていたので、妻の妊娠中はたくさん遊ぶようにしていました。また、双子出産ということで計画分娩が決まっていて、産前産後の数日間は私と子ども2人の生活になるのがわかっていたため、職場でもそのことを伝えて、有給の取得や家庭優先になることを理解してもらいました。
数日間ではありましたが、父と子のふたりだけの生活は、とても楽しいものでした。
もちろん、一人で家事・育児をする大変さを改めて実感する機会でもありましたが、同時に、長男が楽しめるように、夕飯に餃子やコロッケ、手巻き寿司などをメニューにして、一緒に夕飯作りを楽しんだことは、とても大切な思い出になりました。また、長男も、パパとの毎日はとても楽しかったと言ってくれて、母親の不在による寂しさはかなり軽減できたのではないかと思っています。
ー家族5人での生活が新たにスタートされましたが、今はどのように家事・育児を分担しているのですか?
双子が産まれてまだ数ヶ月で、今は新生児の育児にかかりっきりです。最初の1~2週間は生活リズムをつかむことにかなり苦労しました。長男の時は完全母乳にこだわっていたのですが、なるべく妻の負担が少なくて済むよう、今回は2人で話し合ってミルクと母乳の混合にすることを決めました。交互にミルクの日と母乳の日を決めており、ミルクは私が担当しています。生後1ヶ月くらいまでは長く寝てくれても2時間ほどだったので、とにかく寝不足で辛かったですが、今は4~5時間寝てくれるようになったので、だいぶ楽にはなりましたね。
長男はというと、弟・妹ができたことで急にお兄ちゃんになりました。なんとなく親の大変さも理解しているようです。どうしても下の2人優先になってしまう状況なので、そこは申し訳ない気持ちがあります。早く思いきり一緒に遊んであげたいです。
ー来年には奥様も職場に復帰される予定と伺いました。奥様が働くことに関してどう感じているか、またご夫婦での仕事と育児の両立をどのように行っていく予定ですか?
私たち夫婦は同じ業界で知り合い結婚したのですが、当時から妻は仕事でキャリアを積んでいきたいという想いが強くありました。結婚後、妻はCROに転職してCRAとして働いていたのですが、私の転勤で退職をすることになってしまいました。その後は転勤先でまったく別の仕事をしていたこともあります。ただ、CRAとしてのキャリアを諦めきれなかったことから、別のCROに転職して改めてキャリアを積んでいます。
そのような経緯もあったことから、妻の仕事への想いは私も良く理解しています。今後も子育てをしながら仕事を続けていきたいという想いは強くありますから、一緒に復帰後の働き方を模索している最中です。妻にはやりたい仕事をしてほしいと思っていますし、そのために私ができることは最大限サポートしていくつもりです。子どもたち3人の将来もありますから、「一緒に頑張っていこう」という想いです。
過去の反省をふまえ、男性が子育てに参加できる環境を作りたい。
ー今の日本において、男性の育児参加率はまだまだ低いと言われています。Aさんご自身が育児参加する中で感じている想いはありますか?
私は、一人目の育児にあまり参加できなかったことで、妻に対しても子どもに対しても、もっとこうしておけば…という後悔や反省がありました。その経験をふまえて、自分の部下に対しては、パパが育児に参加することの重要性や、「何か参考になればいいな」という想いで自分が家ではどんな風に育児に関わっているかを伝えています。
男性の育休取得も話題になっていますが、男性の子育てに理解のある職場はまだまだ少ないと感じています。私のような経験者から伝えられることもあると思うので、まずは身近な仲間が、育児に参加しやすい環境を作っていきたいです。
ー育児を通して、仕事や部下への向き合い方も変化していらっしゃるのですね。
はい、それは私自身も強く感じています。特に大きな気づきだったのは、子育てとマネジメントには共通点が多いということです。
子どもは日々一つひとつチャレンジし、失敗を繰り返しながらも成長しています。できないのにはそれなりの理由がありますし、たった一つの簡単なきっかけでできるようにもなるということを学びました。
これは、社会に出てからも同じだということに気づいたのです。部下をマネジメントする際、失敗やできないことを責めても意味がありません。できない理由は何なのかを紐解き、どうすればできるようになるかのきっかけを見つけてサポートしていくことが大切だとわかりました。
自分の考え方を変える機会を与えてくれたのが、子育てでした。
ー最後に、夫婦共働きで子育てをしていく上でのアドバイスがありましたら、ぜひお願いします。
あくまで私自身の経験談ではありますが、まずは積極的に家事・育児に参加してみることです。私は料理が好きなこともあって、土日の食事づくりを担当しています。料理をしている時は仕事を忘れて没頭できるので、リフレッシュできる時間でもあるのです。自分が好きなことをやって、結果的に妻の助けにもなるので、まさにWin-Winですね。
あとは、少しの時間でも会話することを大事にしています。お互いの気持ちを知るためには会話が一番です。妻が怒っていれば話を聞いて解決できるようにしますし、自分が折れることも結構あります(笑)。
そして最後に、「ありがとう」や「ごめんね」という気持ちを素直に伝えること、でしょうか。家事にしても育児にしても、奥さんがやってくれて当たり前という考えになってはいけないと思うのです。日々頑張ってくれていることに「ありがとう」と伝える。自分が悪いと思ったら「ごめんね」と素直に謝る。家庭生活を円滑かつ円満に進めていく上でも、大切な言葉だと思っています。
…インタビューを終えて…
これまで女性視点での「仕事と子育ての両立」に関するインタビューを実施してきましたが、男性視点での想いを伺えたのはとても貴重な機会でした。家事・子育てを円滑に進めるためのポイントがたくさん詰まっていましたし、パパたちもママと同じように子育てに関する悩みを抱えているということを知ることができました。
また、今回のインタビューを通して、お互いの仕事の状況や将来目指したいキャリアなどをしっかり話し合うこと、思いやりを持って接することの重要性にも気づくことができました。
幼いお子さんがいる男性はもちろん、女性にとっても気づきを得られるお話だったのではないかと思います。
女性MRにインタビューしたこちらの記事もぜひご覧ください:【共働き夫婦の子育て事情】