働く女性のホンネVol.16
専業主婦は2億円損してる!?

働く女性のホンネVol.16<br>専業主婦は2億円損してる!?

女性の活躍とキャリアについて考える

皆さまこんにちは、「MR Women’s Life」編集者の吉岡です。

昭和の時代には、多くの女性が結婚や出産後に仕事を離れることが一般的でした。しかし、時代は変わり、女性も男性と同じように定年まで働き、充実したキャリアを築くことが当たり前の世の中になろうとしています。
今回は、長らく女性が直面してきた「年収の壁」といった税制の問題、社会からの期待、そしてそれらを乗り越えて自分のキャリアを形成していく重要性について掘り下げていきたいと思います。

「年収の壁」と「専業主婦」文化がもたらした影響

このようなテーマにしようと思ったきっかけは、東京都民の働き方や生き方に関わる制度や会社組織について意見交換を行う「東京くらし方会議」に関する内容を目にしたことでした。
令和6年1月に公開された「東京でのくらし方、働き方について~私たちの思い~」*1という資料で触れられていた内容の中で特に気になったのが、「年収の壁」に関するお話、そして就業パターン別の生涯収入です。

【参考】「東京でのくらし方、働き方について~私たちの思い~」

みなさんも「年収の壁」についてはご存知かと思います。サラリーマンの配偶者の年収が103万円や130万円など一定の額を超えると、夫の扶養から外れて税金や社会保険料の負担が増え、収入が減ってしまうというものです。
戦後、農業者・自営業者とサラリーマンの税負担の差が問題となったことから、1961年に農・自営業者を対象とした専従者控除とのバランスをとるため“所得稼得への妻の貢献(いわゆる内助の功)を税制上評価するなどの趣旨で導入された”*1 わけですが、その後も高度成長と共に1970年代前半まで毎年引き上げられていました。一方で、社会的変化に伴い1992年に共働き世帯数が専業主婦の世帯数を上回る逆転現象が起きて以降、その差は年々拡大しています。

では、世界に目を向けてみるとどうでしょうか。
1970年代にはヨーロッパ諸国がジェンダー平等の政策を打ち出し、世界中で男女平等が叫ばれるようになっていきました。日本の「専業主婦」が理想とされる文化は、世界の流れとは逆行していたのです。結果的に、「年収の壁」が女性の社会進出を妨げる要因ともなってしまい、日本の男女平等の遅れの一因とも指摘されるようになりました。

仕事をせずとも経済的な安心感を得られるこの制度は、一見女性にとっては魅力的に見えるかもしれません。しかし、これは同時に社会との強い繋がりがなくなってしまうだけでなく、女性が自分の能力や可能性を十分に発揮する機会を失ってしまうことにもなりかねません。

収入についてはどうでしょうか。東京都から公開された「東京でのくらし方、働き方について~私たちの思い~」*1 資料内の世帯生涯収入を比較すると、継続就労型は5.1億円、出産退職型は3.2億円、パート就労型は3.5億円と、妻が働き続けるかどうかにより約2億円という大きな差が生まれていることがわかります。妻が継続就労しない場合の夫の収入におけるメリットは、33年間で最大でも約670万円ほどです。「年収の壁」により、女性が得られるはずだった収入やスキル・キャリアを手放さざるを得ない状況、またそれによる収入格差は思った以上に深刻な問題なのです。

私自身が子育てをしながら働いている理由は、ひとりの人として社会から認められたい、自分の能力を高めていきたいという想いがあるからです。また、将来を考えた時に自分自身で稼げる力を身に付けることは不可欠です。夫が急に働けなくなる可能性もゼロではありませんし、この先同じような暮らしができるかどうかは誰にも予測できません。様々な状況を踏まえた上で、自分のスキルアップを真剣に考え、自らの力で日常生活が送れる収入を得られる状態を整えておくことは非常に重要だと考えています。


社会における女性の活躍と経済成長

日本のGDPが下降し続ける中、女性の労働力が注目されています。以前に比べると、専業主婦やパートから脱却し、ひとりのプロフェッショナルとして社会で活躍する女性が少しずつ増えているようにも思います。経済協力開発機構(OECD)の研究によると、女性の労働市場への参加率が高い国は、労働力の増加により経済活動が活発になることはもちろん、性別による賃金格差も縮小されてGDPの成長率も高い傾向にあるとのことです。

このような背景もあり、賛否ある中で長らく続いてきた「年収の壁」も、2023年秋に政府が発表した「年収の壁 支援強化パッケージ」により大きく変化を遂げようとしています。
多くのMR女性の活躍を支援している私としては、改革自体はとても素晴らしいことだと感じています。ただ、女性の社会進出できる環境は整いつつあるものの、女性が安心して働ける社会はまだまだ途上だとも感じています。

英誌エコノミストが経済協力開発機構(OECD)加盟の29か国に対して教育や給与水準の男女格差など10の指標を基に女性の働き方を調査した2023年のランキングでは、日本はワースト3の27位 *2 だったそうです。育児や介護など家庭的な負担は未だに女性の方が大きい状況が続いており、仕事と家庭の両立の難しさを物語っている結果と言えるでしょう。

女性の社会進出は、単に生活の質を高めるだけではなく、国全体の経済成長にも深く関わっています。上述の資料*1によると、今後女性が活躍することにより日本の将来のGDPは40兆円も増やせる(2040年推計)そうです。私たちが今直面している経済的な課題を解決するためには、女性が能力を最大限に発揮して社会で活躍できる政策の推進が必要だと感じています。

変わりゆく社会における女性のキャリア観

女性がキャリアを通じて自己実現を果たすことは、家庭だけでなく、社会全体にとっても大きな利益となります。家事や子育てという重要な役割を担いながら、自分自身のキャリア形成にも目を向けることは、決して簡単ではないこともよく理解できます。
ただ、そうした努力は、自分自身はもちろん、ご家族や社会全体にとっても必ず価値あるものになると思うのです。

「今は子育ての真っただ中で忙しいけれど、自分自身の可能性も大切にしたい」そんな想いが少しでもあるようでしたら、なるべく早めに行動することをお勧めします。
共働きが当たり前になる世の中はもう目の前ですが、いざ働こうと思い立った時に、いわゆるマミートラックの原因のひとつとなる未就業期間は、就活のハードルとなります。ブランクが長くなればなるほど職探しは難しくなりますので、一度離職した方は、社会復帰の時期はしっかりと見極めることが重要です。
今こそ一歩を踏み出すことが、未来への大きな一歩にもなります。日々変化する毎日に精一杯かもしれませんが、ぜひ自分自身のキャリアや人生を豊かにするためにも、ぜひ一度ゆっくり時間をとって考えてみていただきたいと願っています。

*ブランクからの復帰など、MRとして働く上での不安やお悩みがあるようでしたら、随時キャリア相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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