近年、製薬企業において新たな職種として注目を集めているのが「ナースエデュケーター」です。病院やクリニックで看護師として働いていた方のキャリアチェンジの選択肢としても、ニーズが高まっています。
以前こちらの記事で、看護師から製薬業界へ転職し、ナースエデュケーターに転身されたSさんのインタビューをご紹介しましたが、今回はその第二弾!約9ヶ月が経過した現在のお仕事や、業務の中で看護師経験がどのように活かされているかなど、ナースエデュケーターのリアルな現場を詳しくお聞きしました。
[ INDEX ]
ナースエデュケーターの仕事内容
ナースエデュケーターのやりがい
仕事と育児の両立
変化と成長
まとめ・キャリア相談
ナースエデュケーターの仕事内容
現在は具体的にどのようなお仕事に取り組んでいますか?
大手製薬企業のオンコロジー製剤プロジェクトにおいて、ナースエデュケーターとして薬剤の副作用指導や患者さんへの伝え方、患者向け資材の効果的な使い方などを看護師にわかりやすく情報提供する役目を担っています。目標は、看護師全体の知識の底上げと均一化です。
病院の看護師は通常MRから薬剤説明を受けますが、専門用語が多く、治験の理解が浅い看護師にとっては内容が頭に入らないことが少なくありません。私も看護師時代に薬剤の説明会に参加しましたが、「もっと薬剤の副作用や患者さんへの指導方法を教えてほしい」と感じていました。そうした経験から、製薬メーカーとして伝えるべきことをわかりやすく伝えることを重視しています。看護師に寄り添いながら、様々な事例をお伝えし、一緒に患者さんへのアプローチ方法を考えています。
説明会を行う経験は初めてだったと思いますが、抵抗はありませんでしたか?
もともと人前で話すことは苦手ではなく、看護師時代に部署内の勉強会で講師を務めた経験もあります。その際に「わかりやすかった」という声をいただき、自信を持って取り組むことができました。
しかし、最初はスムーズに進めることは難しく、ノートを見ながら話すことから始めました。慣れてくると、自分の言葉でポイントを絞って伝えられるようになり、周囲を見る余裕も生まれました。参加者のメモを取るタイミングを見ることで、どこに興味を持っているのかがわかり、日々情報提供の方法をブラッシュアップしています。
説明会の資料はオリジナルで作成しているのでしょうか?
基本的にはMRと同じ資料を使用していますが、看護師視点から「こう変えてほしい」という意見を伝えて変更してもらっている箇所もあります。
事前準備が一番重要で、説明会前には担当のMRと面談を行い、施設側の要望や参加者の詳細を確認しています。また、自分でもホームページを見て規模感やレベル感、教育体制などの情報を収集し、説明会の内容を施設ごとにアレンジしています。説明会当日には参加者と雑談をしながら傾向を探り、スライドの順番を変更することもあります。
嬉しいことに、MRからは「看護師経験があるからこその言葉選びや説明の仕方が勉強になる」という声をいただいています。資料通りの説明も大切ですが、相手のニーズに応える取り組みをしています。
ナースエデュケーターのやりがい
過去のご自身の経験は、今の仕事に活かされていると思いますか?
はい、看護師としての経験は様々な場面で役立っています。現在勤務している製薬メーカーでは、私が初めてのナースエデュケーターとして関東エリアからスタートしました。ありがたいことに取り組みを評価いただけて、今では全国各地からお声がけをいただいています。
先日は全国的にも注目されている大規模病院での説明会を行いました。症例や実績も豊富なので「今さら説明会は必要ないのでは」という声も出ていたのですが、看護師視点での情報提供の重要性を理解していただくことができました。説明会に参加した方からは「こういった取り組みが製薬業界でも広がってほしい」という声もいただけて、私自身のモチベーションも高まりました。
全国各地にニーズが拡大したのは、まさにSさんの努力の賜物ですね。
看護師として働いていた時に感じていた“看護師視点での情報提供”が一つの形になってきたことに喜びを感じています。ナースエデュケーターを始めた頃は“看護師のために”という気持ちが強かったので、MRにも影響を与えることができたのは予想外でした。
私との会話や説明会を通して、「看護師さんへのアプローチの重要性を感じた」「看護師さんはこんな風に勤務し、こんな風に考えていたんだと知った」などの声をいただくと、この仕事を選んでよかったと思います。
実はナースエデュケーターを試験的に導入し始めた頃は必要性を問う声も少なからずあったのですが、現在は「うちの施設にも来てほしい」というご依頼も増えており非常に驚いています。
参加した看護師の方から「他の部署でも実施してほしいのでお願いできますか?」「他にも聞いてほしい看護師がいるので、もう一度説明してもらうことはできますか?」とご依頼をいただいたこともあります。
現場の看護師の業務は流動的だからこそ、参加できるタイミングを作ることができるなら最大限お応えしたいという想いで取り組んでいます。
仕事と育児の両立
パワフルに全国各地を飛び回っていらっしゃいますが、子育てとの両立はどのようにしていますか?
以前のインタビューでもお伝えしましたが、家族の予定はすべてスマホのカレンダーで管理し、毎朝その日の予定の確認を行います。3人の子どもたちは中学生と小学生でだいぶ手も離れてきましたし、夫や近くに住む母も全面的に協力してもらっているので、家族の支えがあるからこそ仕事に集中できています。
変化と成長
実際に説明会をする前と後で、看護師の方々の変化を感じたことはありますか?
参加された方の変化については、MRからフィードバックをいただくことも多く、手応えを感じています。これまで患者向け資材を使って患者さんに説明をしたことがなかった看護師の方も、スムーズに説明ができるようになり、実際の問診で活用いただけるようになっています。
特に「これまで問診に行くのが怖かったけれど、理解が深まったことで患者さんに躊躇なく会いに行けるようになった」という声が嬉しいです。質問に答えられない不安がなくなり、自信を持って患者さんと向き合えるようになったのだと思います。
また、説明会に参加された方が、病院全体で患者さんへの説明時に資材を活用していこうと提案してくださったという話も聞き、影響力の大きさを実感しています。
自分自身の変化や成長を感じる瞬間はありますか?
看護師時代は他の施設を見ることはほとんどありませんでしたが、ナースエデュケーターとして全国の施設を訪問することで、各院の取り組みや工夫を直接知ることができました。
様々な施設を見ているからこそ、どこが優れていて何が足りないかが明確に見えてくることが楽しいです。
「これができているのは素晴らしいです」と伝えることもありますし、「もっとこうしたらメリットがあります」とアドバイスすることもあり、コンサルティングのような立場にもなっています。自分自身のキャリアが広がっていくのを感じています。
看護師は感謝される仕事というイメージがありますが、実際はクレーム対応なども多いですよね。
はい、病院で働いていた時には感謝されるという感覚をあまり持てませんでしたが、ナースエデュケーターとしては「ありがとう」と感謝の言葉をいただく機会が増えました。
自分の知識や経験を話した上で「ありがとう」と言っていただけることで、努力が報われた気持ちになります。
また、視野が広がったことで看護師を続けていたら気づけなかった部分に気づけていますし、自分の看護観を見つめ直すこともできています。
余談ですが、出張に行く時はいつも子どもに「旅行でも行くの?」と言われます。それくらい楽しそうに見えているようで、実際私自身も様々な施設に行けることが本当に楽しいのです。看護師をずっと続けていたら、この姿を見せることはできなかったかもしれません。
今後製薬業界で続けるにしても、看護師に戻るにしても、ナースエデュケーターの経験はプラスになると確信しています。
まとめ
Sさんの経験や成長、やりがいを聞き、看護師としての知識と経験を活かしながら新たなキャリアを築くことの魅力が伝わってきました。
看護師の経験と製薬企業での視点を融合させ、患者さんや看護師にとって価値のある情報提供を行うSさんの取り組みは、多くの看護師にとって新しいキャリアの可能性を示してくれるでしょう。
ナースエデュケーターに興味をお持ちの看護師の方向けに「キャリア相談」を実施しています。
まだはっきりと働くイメージができていない方でも大歓迎です。キャリア担当のスタッフと会話をしながら仕事への理解を深めていきましょう。家事や育児との両立についても一緒に考えていきますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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